いつの頃からか、見沼田んぼ西縁にはヤブカンゾウが自生し、
地元の農家も保護していた。生活形態の変化に伴う機械による
草刈りなどによって、ヤブカンゾウの数が減っていた。その再現を
願うある農家の人が、平成6年ごろから一人で自宅前の土手で
再生を試みる。
平成8年からは同じ地域に住む自治会員らが春と秋に草刈り作業を
始めたが、その活動が徐々に広まり、当初120メートルだった保護
地域が、現在は1.5㌔に拡大。
平成17年に、この活動を永続させるために、農家さんが所有して
いた土地の提供を受けて「NPO法人カンゾウを育てる会」が発足。
ヤブカンゾウ自生地を拡大させ、地域住民が自ら見沼の自然を
守ることで、居住区を超えた交流を図り、愛着の持てる街づくり
を目指して活動している。
その後、誰もが西縁の自然を安心して鑑賞できるよう市に一部
遊歩道化を要望して実現。以来、木崎、皇山、上木崎、大原
1・2丁目の各自治会共催の観桜会が開かれている。
また湧き水を有効活用してトンボ池を企画、蛍の育成などにも
取り組み、平成21年には国土交通省から「みどりの愛護」
功労者、環境省から「環境保全」功労者を同時受賞。
平成26年には「川の応援団 美化活動団体」として県知事
表彰を受けた。
カンゾウを育てる会の活動を広げるきっかけとなった農家さんは
一昨年に88歳で他界するが、長年一緒に活動してきた会員からは、
この土手に「農家さんの名前を残せたら」という声も出ている。
【さいたま朝日2015年5月24日号掲載】
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