1966年に竣工された埼玉会館は、老朽化のため大規模な改修工事に入り、
今年の10月から再来年の3月まで休館となる。文化的イベントの会場としては
もちろん、モダニズム建築物として高い評価を受ける埼玉会館を訪ねてみた。
御成婚記念埼玉会館建設
渋沢栄一や市民の寄付
埼玉会館は大正15(1926)年、昭和天皇の御成婚を記念して建設され、
「御成婚記念埼玉会館」と称し、その建設費は当時としては破格の33
万円だった(当時朝日新聞の1か月の購読料は1円)。
埼玉会館の建設計画は1923年に立ったが、同年に起きた関東大震災の
復興を優先させるため、建設が延期されていた。その1年後、埼玉県
深谷市出身で、日本資本主義の父と言われる渋沢栄一が中心となって
寄付を集め、着工にこぎつけた。
県民の力を結集した埼玉会館が竣工すると、花自動車や山車が出て街中で
祝賀ムードに沸き返ったという。その後、第二次世界大戦後には、
一時的に駐留軍政府が置かれたこともあった。
新制埼玉会館の設計はモダニズム建築の旗手
昭和30(1955)年頃になると、老朽化した埼玉会館の建て替えを望む
声が上がり、モダニズム建築の旗手として、日本の建築界をリードして
いた前川國男が設計し、昭和41(1966)年、現在の埼玉会館が完成する。
高低差のある土地の形状に併せて造られた二段のエスプラナード(散歩道・
広場)は、建物の60%を地下に潜らせることによって生み出された。
後方には3月に閉館した埼玉県立図書館があるが、それとも呼応して造られ
たエスプラナードのタイル模様は、美しく花が咲いたような模様。
大ホールは、「音響家が選ぶ優良ホール100選」にも選ばれた木のホール。
松本清張原作、野村芳太郎監督の映画「砂の器」(昭和49年)の中の
コンサートシーンでも使用されている。
利便性を高める改修工事
今回の改修工事では、主に地下部分が対象となる。受付窓口や会館
事務所の移動など。またトイレの刷新や回遊性を重視したデザイン、
高齢者や障害者らの利便性を高めるバリアフリー化など建物内部の
改装が中心で、建て替えではない。
埼玉会館では、改修工事が始まる前に、館内の見学会や、建築物の
考察をする講演会などを企画している。正式に決定次第『さいたま
朝日』3面「耳よりり情報BOX」でも紹介する予定。
(さいたま朝日2015年4月号より)
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